やさしい年金教室年金と失業手当(11/29)併給ダメ、一時切り替えは可能 読者から「ゆうゆうLife」に、こんな相談が届きました。「夫の会社が近く閉鎖されることになりました。夫は年金を受けていますが、失業手当も受けられるのでしょうか」。仕事探しが難しくなる六十歳前後の退職と年金、失業手当(雇用保険の基本手当)の関係は関心の高いところです。今回は「年金と失業手当」をリポートします。(佐藤好美) 高松市に住む主婦、大沢清子さん(60)=仮名=は、タクシー運転手の夫(62)と二人暮らし。夫は昨年から月額十三万円の年金を受けており、清子さんの厚生年金、夫の給与も合わせて悠々自適の生活。しかし、夫の勤めるタクシー会社が十二月に閉鎖されることになり、悩ましい日々だ。 清子さんは「また、仕事が見つかればいいんですが…。私もパートに出ていますし、夫も週に二、三日でいいから、働いた方が健康にもいいと思うんです」という。 清子さんが気になったのは、夫が払い続けた雇用保険はどこかで"回収"できるのか、という疑問だ。夫は二十五歳で働き始め、約四十年近く働いてきた。六十歳で退職した後も、同じ会社に再雇用され、月給はそれ以前とほぼ同じ、歩合込みで約二十万円。年金保険料、健康保険料、雇用保険料も変わらずその中から払っている。しかし、雇用保険の給付は一度も受けたことがない。 「社会保険は働く者の義務だから、雇用保険は掛け捨てかとも思うのですが、四十年近く納めたのですから、一時金などで多少なりとも、受け取る仕組みはないのかと思って…」と、清子さんは淡い期待を抱く。 厚生労働省によると、年金と失業手当の両方を同時に受けることはできない。また、失業手当は突然、職を失った場合の生活保障が目的なので、「保険料を戻す」という発想はない。ただ、すでに年金を受給していても、失業手当に切り替え、その後再び年金に戻すことは可能だ。 シニアの雇用と年金に詳しい社会保険労務士の高本博雄さんは「一般には、年金よりも失業手当の方が高いが、両方の額を実際に比較して決めた方がいい。ただ、手取り月給から失業手当を推測するのは危険。年齢や事情によって給付率も違ってくるので、離職前に会社から渡される離職票を持参し、ハローワークで相談するのが確実です」という。 失業手当の手続きをしたら、社会保険事務所で年金の一時停止手続きをする。失業手当が終了したら、年金の再開には時間がかかるので、手間はかかっても社会保険事務所で再開手続きをするのが賢明だ。 高齢者にとって、雇用保険を納めたメリットは、失業手当以外にもある。仕事は見つかったものの、給与が今までよりも一定以上、低い場合は「高年齢雇用継続給付」が受けられる。 ただし、失業手当を期限いっぱい、受けた人は対象外だ。失業手当の給付日数が百日残っていれば一年、二百日残っていれば二年、失業手当をまったく受けていなければ、六十五歳までの最大五年間受け取れる。 大沢さんの場合、年金があるので、失業手当を受けずに雇用継続給付を受ける条件を温存する方法もある。ただし、雇用継続給付も失業手当も一年以内に手続きをしないと、受けられなくなるので要注意だ。 ただ、高本社労士は「大沢さんの場合、オーソドックスに失業手当を受けながら再就職先を探し、職が見つかったが、給与が低い場合には雇用継続給付を受けるのが現実的」という。 六十歳を過ぎて転職先を探すのは容易でないうえ、六十二歳の大沢さんの場合、雇用継続給付の受給上限である六十五歳まで、あと三年しかないからだ。 ちなみに、清子さんが期待を抱いた「退職時の一時金」は、六十五歳以上の人が対象なので、大沢さんは受けられない。 六十歳からの再就職について、高本社労士は「派遣社員とか、パートという響きに抵抗感の強い人が多いが、どちらも一定時間以上働けば、高年齢雇用継続給付の対象になる。また、週に数日勤務の派遣やパートなら、年金と給与との併給調整も受けずに済む。給料は下がっても、収入はトータルでそれほど違わないケースもあるので、実を取る気持ちで仕事を探すことが大切」と話している。 ◇
【用語解説】
(平成17年11月29日 産業経済新聞「やさしい年金教室」)
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